110サニー 6番目

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110サニー 6番目

 わたしは次の日、決定的なミスを犯した。朝から仕事にやる気がなく、50ccのキックピニオンと80ccのキックピニオンを逆に取り付けていたのだ。キックピニオンのケースは同じなのでタチが悪い。  スクーターのラインをすべて止めてしまった。  顔色の悪い職長が飛んできて、「お前、なにやってるんだ」製造現場ではラインを止めてしまうのはものすごい悪なんだ。  「すいません、すいません」平謝りに謝っても職長は僕の足元のサブラインの作業台をずっと蹴り続けていた。  小池サブ主任は工場のリノリュウムの床を、スニーカーでキュキュといわせながら走ってきた。  「職長、申し訳ありません。わたしの指示が間違っておりました。と深く頭を下げた。」  「気をつけてくれよ、まったく、近頃のアルバイトには…」と言うと違うラインに戻って行った。  「小池主任、申し訳ありません」 とわたしが言うと、「何も気にせんでええら!少し残業になるけど大丈夫?」と優しく言った。  「はい、申し訳ありません、何時間でもやります」と言うと。「そんなにはかからんら。1時間ぐらいかな」と言うと優しく微笑んだ。小池主任の身体からいつもと違う良い香りがした。  
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