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この粕川という男の声色の、妙に腑に落ちない依頼に、少し苛立ちに似た身震いを覚えた。
たかが、自分の妻がいなくなったからといって、そんなに騒ぎ立てることだろうか。
庭いじりをしているとか、外に洗濯物を干しているとか、部屋にいないこともあるはずだ。
なのに家の中に姿が見えないというだけで、それほど慌てるだろうか。
きっと、よほど妻の瑠那に惚れているんだろう。
それにしても、そこまで惚れられて、瑠那もこの粕川の思いをうざったいと感じることもあったかもしれない。
まあ、どうせ夫の強すぎる愛情に嫌気がさしたのであろう。よくある話だ。
エアコンも直せないほど切羽詰まった状態の俺にとって、背に腹は代えられぬほどだ。仕事を選んでいる場合ではなかった。金に糸目はつけぬというので、早速その瑠那という女性を探すことにした。
少し息抜きでもして、しばらく家を空けるつもりなのだろう。その程度に考えていた俺は、さほど深く調べようとはしなかった。
だが、それはだんだんと不可思議な疑問を脳裏に浮かべる要因となっていった。
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