surveillance

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近所でお茶をしていることはないだろうか。これだけいつも気にかけられていたら、息が詰まることもあったかもしれない。 そこで近隣の人にも、それとなく伺いを立ててみた。 だが、どうやら暇を潰している訳ではなさそうだ。それよりも、近隣の反応がおかしい。声をかけた人の中には、俺の予想とは違う答えが返ってきた。 「あら、あの人に奥さんいたの? 一度も見たことないけど。近所付き合いなんてほとんどないからね。だって挨拶もしないもの。それに粕川さんだっけ? 何だかほら、暗い雰囲気で少し怖い感じもするじゃない。近所に引っ越して来た人はいたけど、変わったことといえばそれくらいかしらね」 一度も見たことがない? そんなことがあるのだろうか。 俺は、電話で言っていた粕川の話をふと思い出していた。 確か粕川は、こうも言っていた。 「まだ子どもが生まれたばかりなんだ。妻が生んだものなのに」 とか、 「探す時に『絶対に妻がいなくなったことを悟られるな』」 それから、 「一度だけSNSに写真を載せたことがあるが、書き込みが良いものと悪くいうものがある。中にはどこにいるかとか、どんな様子なのかとか聞くヤツもいて、だんだんウザくなっていやになった。だから絶対に『自分以外に写真は見せるな』」 と。
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