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俺の捜査網には、多くは語れないがそれなりの知り合いがいる。
瑠那という女性を見たかどうか、それを教えてもらえれば、あとは俺の仕事だ。
簡単な仕事のはずだった。しかし、瑠那を見たという情報は、一切俺の耳には入ってこなかった。
ただ一人、高架橋の下をねぐらにしているじいさんは、妙な女性が走っているのを見かけたと言っていた。
その女性は、冬だというのに薄着で出歩き、その上裸足で走っていたというのだ。
明らかにおかしい。
この女性が、瑠那なのだろうか。写真を見せたが、羽毛布団を買ってくれたら教えてやる、などと寝言を言い出した。寝ぼけ眼のじいさんには、それ以上のことを聞き出すのは出来なかった。
もしそれが瑠那だとしたら……それは、ただの家出ではないのではないか。よからぬ妄想が、俺の中に淀んでは沈んでいった。
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