2杯目は貴方の好きなお酒を

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 画面に移った簡単なテーブルゲームを操作しながら、ちらりとパソコン画面に目をやる。  外食が嫌厭されるこのご時世、数少ない連絡を取れるような友人たちとリモート飲み会が行われることがあった。  しかし、ずっと画面に向かいながら酒やつまみを飲むもどかしさに耐えられず、誰かが始めたゲーム。難しいものではなく、テーブルゲームや双六などのあまり集中しなくてもいいようなゲームばかり。 『――でさでさ、GoTo対象なんだって。行かない?』  静かに置かれる焼かれた魚肉ソーセージ。  ちらりと目をやれば、新しいつまみを追加した男は、何も言わず、向かいに座り、ウイスキーを煽っては、ゲーム画面を指してそっちの方がいいのではないかと、静かにゲームに参加してくる。 『いや、リストラされたんでしょ? 大丈夫なの?』 『リストラじゃなくて、早期退職! 人聞き悪い!!』  少し聞こえてきた話に、困ったように目をやっている気持ちはよくわかるが、何も言わず新しいつまみをレモンサワーで流し込む。 『ヒナは行ける? 会社厳しい?』 「大丈夫だよ。集まるって言っても、いつものメンバーでしょ」  一応、避けるようにとは言われているが、国が4人以下と指定しているのだから、会社も4人以下の会食については強く出れない。  他の会社もなんとなく似たようなものらしく、久々に顔を合わせる飲み会が開かれることになった。 「よかったな」  リモート飲み会を終えて、通信を切れば、こちらに目をやる隼人。  同棲している一応、恋人。 「居酒屋とか久しぶりだなぁ……メロンソーダとかあるかな?」 「ないだろ。いや、まぁ、アレはアレでうまいんだが……」  かつてバイトしていたダーツ&ビリヤードバーのマスターが、感染症の影響で酒の提供が難しくなったということで、何を血迷ったのかメロンソーダーを筆頭にカクテルソーダ(ノンアルコール)の試作を始め、何度か試飲会に参加した。  今はダーツとビリヤードのおかげもあってか、暇を持て余した学生に人気があるらしい。 「終電逃したら連絡しろよ。絶対歩いて帰ってくるな。タクシー呼べ」 「だ、大丈夫だって。学生の時はお金がなかったからで、今はちゃんと稼いでるし」 「ならいいが」  これ、全く信用していない目ですね。
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