重なる悲劇

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目を開けると白い天井が見えた。 「うぅ...」 「気がつきましたか。先生を呼んできますね」 看護師さんがつれてきた医者によると私は右脚の腓骨,橈骨の骨折。膝の半月板損傷および前十字靭帯損傷という診断だった。逆に言えばあの状況で右脚以外ほとんど無傷だったと言える。どうやら私はとっさに車を避けようとしたらしい。とは言ってもけがはそうとう酷く,右足は腫れがひかないためにギプスが巻けずシーネと包帯で厳重に固定されて架台にのせられていた。腫れが引き次第手術を行う予定だそうだ。 「はぁ...嫌だな手術...」 ーーー10日後手術が終わった右脚には膝上から真っ白なギプスが巻かれた。そのおかげかだいぶ痛みも引き,幾分か楽になった。本来は聡子ほどの怪我となると入院しながらリハビリを行うのだが,長い間大学を休む訳には行かない。そこで3日に1回通うことにしようと聡子は考え,医者に相談しなんとか許可をもらった。 ーーー久々に両松葉杖姿で大学に現れた聡子に彼女の友達たちは次に質問を投げかけてきた。 「どうしたの?」 「うわぁー痛そう...大丈夫?」 「治るのにどのくらいかかるの?」 聡子はその質問ひとつひとつに笑顔で答えた。 しかし講義が終わる頃には膝から脛にかけての患部には鈍く痛みが出てきていた。大学を出て,なんとか最寄りの駅までたどり着き一息つく。松葉杖をついているせいで脇まで痛くなってくる。人が多い電車で席を譲ってもらえたことが唯一の救いだった。 家の最寄りの駅に着き,再び松葉杖をついてあるきだす。聡子の足はまた悲鳴をあげ始めた。さらにこの後自分の身に悲劇が起こるなどということは考えてもいなかった。
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