重なる悲劇

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聡子は慣れない松葉杖をつき,もう限界だった。そこで普段は通らない近道を通ることにした。そこは夜薄暗い路地であまり通らないようにしていたが今回ばかりは通るしかない。少し躊躇いながらもため息をひとつついて路地に入る。そして少し進んだところだった, ドンッといきなり背中を押された。何が起きたのか分からないまま聡子は地面に倒れていた。起き上がろうとすると顔をサングラスとマスクで隠した男が馬乗りになってきた。「嫌っ!なんなの!」男は何も答えずに手に持っていたものを振り上げる。(え...ハンマー...?)そして次の瞬間聡子の太いギプスが巻かれた右脚の脛あたりに勢いよく振り下ろした。メリッ!バキッ!バキッ!「うわあああああああ」鈍い音がしてギプスが割れ、ハンマーが脛にめり込む。想像を絶する痛みに聡子はひめいをあげる。さらに男はハンマーを振り上げる。「はぁ...はぁ...まさ...か!」バキッバキッゴリュッバキッ!今度は右膝に激痛が走る「いやああああああ...ああ...ああぁ」治りかけの膝は簡単に破壊されてしまう。「うぅあぁ...くっっ!このッ!」左脚で攻撃しなんとか逃げようとする聡子だったが、逆に男に足を掴まれ、バキッゴキッゴリュゴリュ!「ああああああああああああああ」何度も左脚にハンマーを振り下ろされて聡子は失神しそうになる。「うぅ.....あ............ぁ」そんな聡子を見た男だったが、今度はおもむろに右腕を持ち上げる。「ま....さ...かぁ......うぅ....や...やめ.....て」自分の右腕に何度も振り下ろされるハンマーを虚ろな目で見ながら聡子はゆっくりと意識を手放した。 ーーー5日後、目を覚ました聡子の身体は酷い状態だった。両脚は天井から吊られ、腕はギプスで何倍もの太さになって牽引されていた。治療中だった右脚はさらに悪化し、医者には元どうりになるのは難しいと言われていた。他の部位は失神したあとにさらに痛めつけられたらしく、左脚は膝が逆に曲がっており緊急手術が施された。右腕は骨が飛び出している酷い状態だったのでこちらも手術して天井から牽引されていた。左腕は肘から反対方向にねじ曲げられて酷く腫れてギプスすら巻けずにシーネと包帯で厳重に固定されていた。食事も用をたすのにも自分では何一つできない状態だった。看護師さんに食べ物を口に運んでもらい、オムツを付け替えしてもらう......。そんな生活が始まるのだ。
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