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【1】
「よお、光沙。今日ヒマ?」
講義が始まる前の大教室で、友達と喋ってた私に馴れ馴れしく話し掛けて来た同じ学部の男。
「仁科くん、光沙はあたしと──」
返事もしない私に、桃子が気遣って庇おうとし掛けるのを机の下で膝に手を置いて止めた。
友達を矢面に立たせて知らん顔する気なんかない。放っておけばいいのよ。
まあ、桃子は私といなきゃ巻き込まれることもないものね。それは本当に申し訳ないわ。
「阿久津さん、司の気持ちもわかってやってよ~」
「光沙って今フリーでしょ? 仁科くん、スペックも別に悪くないんだしデートぐらいしてあげれば? で、もう付き合っちゃえばいいじゃない」
「悪くないってひどいな、神倉さん。司、結構カッコよくない?」
「そう思うから付き合えばって言ってんの」
好き勝手に盛り上がるクラスメイト。だったら彩、あんたが仁科と付き合えば?
あんたたちにとっては、私の意志なんてどうでもいいのね。
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