【3】

1/3
前へ
/15ページ
次へ

【3】

「光沙。俺さ、ホントにお前が好きなんだ。だから、その。……一回でいいからデートしてくれないか?」  帰ろうと講義棟から出た私は、待ち構えていたらしい仁科に捕まってしまった。桃子はサークルで、私は今日塾講バイトだから別れたんだ。  まあいいわ。これが最後のつもりで、もう一度きっぱり告げよう。 「……いいよ。ただし一回だけね。それでもう二度と私に話し掛けないし構わないって誓えるんなら、その一回だけは命懸けで我慢するわ。で、どこ行くの?」  吐き捨てるような私に、仁科は顔を歪める。 「そ、……! そんなに俺のこと嫌いなのか?」 「嫌いよ。もう何回言った? あんたの顔見るだけで反吐出そう。名前で呼ばれるのも」  正直に答えると、目の前のクズは目を潤ませた。気持ち悪い。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加