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【3】
「光沙。俺さ、ホントにお前が好きなんだ。だから、その。……一回でいいからデートしてくれないか?」
帰ろうと講義棟から出た私は、待ち構えていたらしい仁科に捕まってしまった。桃子はサークルで、私は今日塾講バイトだから別れたんだ。
まあいいわ。これが最後のつもりで、もう一度きっぱり告げよう。
「……いいよ。ただし一回だけね。それでもう二度と私に話し掛けないし構わないって誓えるんなら、その一回だけは命懸けで我慢するわ。で、どこ行くの?」
吐き捨てるような私に、仁科は顔を歪める。
「そ、……! そんなに俺のこと嫌いなのか?」
「嫌いよ。もう何回言った? あんたの顔見るだけで反吐出そう。名前で呼ばれるのも」
正直に答えると、目の前のクズは目を潤ませた。気持ち悪い。
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