たくさんの人が居る

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たくさんの人が居る

おばぁさんはとっくに居なくなってしまったと思われた。 私の大好きだったおばぁさん。 けれど、 広い世界に眼を向ければたくさんの人が居る。 そんな当たり前な事にすら気付けなかった。 ボランティアなんて無かった その昔、 「困った人がいたら、助けてやるのが当たり前なんだよ」 と、いつも言って育ててくれた 私のおばぁさん。 その言葉が色んな人と出会わせてくれた。 声を掛けてもらえる事の温かさ。 一生懸命な人の姿。 涙が出るくらい美しい夕焼け。 夕闇に包まれたほんの一時の時間。 朝日があまりにもきれいだったり。 こんな時間を忘れたくないな。 私はたった一人 広い世界に取り残されてしまったみたいに思っていた。 淋しくて、淋しくて… でも、大丈夫。 今は美味しいものを食べた時、 美しい景色を見た時、 うれしいことがあった時、 いつも、 一つ一つを心の中で一緒に味わっている。 そして、 今、私の目の前にはたくさんの人が居る。 そのことに気付く… 眼には見えないかも知れない。 けれど、 確かに感じることが出来るから。
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