君とふたたび

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君とふたたび

8年が過ぎた、辛く苦しく胸を掻き毟られるような日々・・・・薫にとっては理由もわからず突然消えた俺を探すやりきれない毎日・・・・・ あれからもう一度薫と暮らすために俺は時間のすべてを掛けて今日まで過ごしてきた。 薫は私も許してくれるだろうか? もう一度やり直してくれるだろうか? 薫の前から消えて初めの3年間は我武者羅に仕事を覚え無我夢中で過ごした、一刻も早く薫のそばへ戻れるように・・・・・ そして3年が過ぎて父が病を機に引退し3代目社長となってから、この場所を離れるための計画をスタートさせた。 まずは私の代わりにこの会社を任さられる人材を探した、私が去った後すべてを任せられる信頼と人望のある人材・・・・・ 入社10年目の染川大輔という男を見つけた、大柄な体格に似合わず繊細で明瞭快活そしてなんといっても頭の回転がずば抜けてよかった。 彼を側に置き社内の人間関係、経理、取引関係、多岐にわたるすべてを叩き込んだ。 それと同時に人知れず新しい会社を立ち上げ、薫との将来を見越して着々と準備を進めた。 そして父が裏の仕事として君臨していた組織も少しづつ解体に向けて動いた。 行き場のなくなった若い者達が多い中、彼らに仕事を探し表で働く安心と自信を教え込んだ。 彼らは世間から爪弾きにされ行き場のなくなった若者たちだった、自分の道さえ見えてくれば危ない世界に身を置くことはない。 裏の組織も少しづつ弱体化していった。 染川が仕事を覚えるに従い、自分が社内にいる時間を少しづつ減らし、彼の存在意義と価値を社員に知らしめた。 経常利益も上がり、自分の役目が終わりに近づいたころ父親が急逝した。 これでやっと自分に課せられた呪縛から解放されたと思った。 染川大輔にすべてを話し、久我山酒造から身を引いた。
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