絵になる

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次に自己紹介をするのは私と同じような制服を着た高校生。いや、チェックのスラックスと水色シャツは私立の名門校のものかもしれない。そして静かな雰囲気の美少年。まさに若い芸術家という雰囲気だ。 「結城真白。高校二年生。油彩専攻」 結城君の自己紹介はそれだけ、愛想も何もなかった。それすら芸術家っぽいが、これはテレビだからそうはいかない。雨宮さんが司会として情報を付け足す。 「結城さんはコンクールで作品が何度も入賞しているんてすよね。そしてお父様が画家の結城真一さんで、お母様が銅版画家の赤城夕子さん。僕この間お父様の個展見に行きましたよ」 「どうも」 雨宮さんがせっかくふくらませた話題もそっけない返事しかない。 まぁ、彼は愛想ふりまく理由がないのだろう。正統派の才能があって、両親も芸術家のサラブレッド。今更こんな大衆向け番組に出る必要はないだろうに、名前がすごくて顔もいいからと番組に誘われたのだろう。 さらに次。これまた高校生らしく制服を着ているけれど、上はシャツじゃなくてアニメキャラのTシャツを着た男子。飾り気のない短髪に黒縁メガネで、どこかたよりない雰囲気がある。 「『黒ノ騎士✝煉獄✝』です。高校三年生で、ライトノベルの表紙など担当しているイラストレーターやってます。陽キャみたいな企画に出る事になってビビってます」 黒ノ騎士✝煉獄✝。彼は私と同じように高校生でありながらイラストの仕事をしている人だろう。彼は透明感のある美少女が得意で、キャラクター原案したライトノベルは今アニメになっているほどだ。 間違いなく才能があるんだから堂々としていればいいのに、若者を集めたリアリティーショーだからか腰が引けているようだ。 「なんとお呼びすればいいでしょうか。『クロノ』さん? 『煉獄』さん?」 「クロで! すんません、中二病のピークにつけた名前のままなんです!」 純粋に呼び名を確認したい雨宮さんにとても恥ずかしそうにクロさんは答え。それを見て私は本名をアルファベットにしただけのペンネームでよかったと思う。結城君のせいで冷えた場の雰囲気はクロさんのおかげで少しだけ和んだ。
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