絵になる

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「あ、そちらはスポンサー提供の画材です。持参した慣れたものを使ってくれて構いませんが、出来れば使ってほしいとのことです」 「なるほどー、番組ですもんねぇ」 ふらみんさんが関心する。油絵などの画材はデジタルの私達には関係ないけれど、それらは高価だと知っている。それでも提供してくれるのは私達が使うことで宣伝になるためだ。 「食堂を挟んで隣が彫刻用の部屋で、こちらは粘土や木材を使う作品作りにどうぞ」 「おおっ、広い!」 土っぽい匂いのする部屋を早速駆け回ったのは彫刻専攻の赤城……太陽さん。今すぐにでも粘土に触りたさそうにしている。 次は階段で二階に上がる。こちらはあまり汚れそうなものはなく清潔。 「二階は作品やモチーフを詰め込んだ倉庫と、資料室ですね。クリスタル探しとデジタル制作の方は利用して下さい。なお未発表作品の持ち出しは厳禁です」 「パソコンは調べもの用ってかんじだな。でも最新のタブレット用意されてんなら試してみたいな」 資料室は電子機器と画集などの本棚がある。目ざとくクロさんがパソコンなどのスペックをチェックする。私のようなイラストは細かな設定を必要としないから適当なタブレットでどこででも描けるけど、クロさんみたいな繊細なイラストはとにかく機能が必要だろう。 本棚には王崎晶の作品集もあるし、他の芸術家の作品集もある。これを自由に見ていいというのは、いい環境かもしれない。 これがまるごと自分のものとなるのなら、そりゃあこの企画の目玉賞品となるだろう。 油臭い倉庫は王崎晶が今まで描いたキャンバスや、絵のモチーフにするための瓶などがあった。 「あとはA棟が男性の宿泊施設で、B棟が女性の宿泊施設となっております。そちらについては同性のスタッフに尋ねるようにしてください」 さらに宿泊棟✕2。荷物を置きにちょっと寄っただけだけど、ベッドに机と椅子にクローゼットがあって十分暮らしていける部屋が用意されていた。しかもスタッフも何人か滞在できる。改めてとんでもない別荘だと思う。 「あとは外出ですね。皆さんお仕事や学校もありますし、買い出しもあると思います。そういう時はスタッフが送りますし、定期的に近くの都市部に出入りしてますので、遠慮なくどうぞ」 「ええと、バスはわりと近くに停まりましたよね?」 私はつい宇野さんに質問してしまった。いたれりつくせりだけど、それだけに何かがひっかかる。
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