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教室のドアが開き、いつものように担任が入ってきた。いつもと違ったのは、担任のあとから一人の女子が教室に入ってきたこと。まるでアイドルのような彼女を見て教室中がざわめいた。
「みんなに新しい仲間が加わるぞ」
担任が教壇に立って言った。彼女は教壇の横にすっと立って僕たちの方を向いた。
「初めまして。白鳥つばさです。よろしくお願いします!」
大きなリボンで結んだポニーテールを揺らしながら彼女は深々と頭を下げた。
「白鳥さんは窓際の一番後ろの空いている席へ」
担任が言った。それは僕の隣の席だった。彼女が歩いてきて、僕の席の前で立ち止まった。
「青井くん。また会えたね!」
彼女が僕に言った。教室中がざわめいた。彼女が席についた。僕は慌てて彼女に言った。
「誰かと間違ってません? 僕は君のこと知らないんだけど」
「間違えてなんかいませんよ。青井空くん!」
「名前はそうだけど人違いだよ」
教室中が騒然としている。担任が「静かに!」と言うと、みんな大人しくなった。それからホームルームが始まった。
「僕たち、知り合いだと思われてるよ」
僕たちは小声で話し続けた。
「何かいけないことでもあるの?」
「いや・・・別に・・・」
彼女が教室の中を見回した。それから僕の顔を見て言った。
「なんかわくわくするね」
「何の期待をしているの? すぐに分かると思うけど、ここはつまらないただの進学校だよ」
「みんな頭がいいんだ」
「そんなことはない」
「今日の君は、なんか静かだね」
「僕はいつもそうだよ。君の知っている『青井空』って人と比べてもらっても困る」
「でも良かった。こうして君に会えた。私、とっても嬉しいです。神様、ありがとう」
そう言って彼女は、窓から蒼い空を見上げた。
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