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「詩織。俺、美音が好きなんだ。だから……ごめん」
大学生になりたての春に出会った、遥人。同じ学科で、授業もよくかぶっていて、気がつけば毎日のように行動を共にしていた。
私と友達の美音、遥人、遥人の友達の歩夢。この4人で行動することが当たり前になっていった。
授業のない時間は、空き教室でお菓子を広げてしゃべるのが日課。
サークル活動がない日の夕方は、ご飯やカラオケ、色々な場所へ出かけた。休日も4人で遊んだ。
平和だった4人の関係が少しずつ崩れ始めたのは、その年の夏の終わり。始まりは、私の告白。
「そう……だよね」
わかってた。遥人が美音に惹かれていること。
美音と話す遥人はいつだって嬉しそうで、そんな彼の顔を私はただ見つめるだけ。ずっと苦しかった。「ねえ、私のことも見てよ」って。
だから、思わず言っちゃったんだよ。「遥人が好き」って。
「……まあ、わかってたよ。遥人、わかりやすいし」
「えっ、そうなの!?」
「美音は美人だし、モテるよ?」
「知ってます……」
「遥人にはハードル高いと思うけどな」
「おいっ」
だから私にしておけば良いのに、と言いたくなる唇を結んで、精一杯の笑顔を作る。
「頑張って」
行動を共にしていても、いつだって遥人には美音しか見えていない。私なんて、いてもいなくても、きっと気づかない。
遥人なんて嫌いだ。嫌いになってしまいたい。
だけど。
「……ありがとう」
ほら。今だって、日だまりみたいな笑顔を見せるから。
悔しいくらいに惹かれてしまうんだ。
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