君に繋ぐイエローテレフォン

3/15
18人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
詩織(しおり)。俺、美音(みね)が好きなんだ。だから……ごめん」  大学生になりたての春に出会った、遥人(はると)。同じ学科で、授業もよくかぶっていて、気がつけば毎日のように行動を共にしていた。  私と友達の美音、遥人、遥人の友達の歩夢(あゆむ)。この4人で行動することが当たり前になっていった。  授業のない時間は、空き教室でお菓子を広げてしゃべるのが日課。  サークル活動がない日の夕方は、ご飯やカラオケ、色々な場所へ出かけた。休日も4人で遊んだ。  平和だった4人の関係が少しずつ崩れ始めたのは、その年の夏の終わり。始まりは、私の告白。 「そう……だよね」  わかってた。遥人が美音に惹かれていること。  美音と話す遥人はいつだって嬉しそうで、そんな彼の顔を私はただ見つめるだけ。ずっと苦しかった。「ねえ、私のことも見てよ」って。  だから、思わず言っちゃったんだよ。「遥人が好き」って。 「……まあ、わかってたよ。遥人、わかりやすいし」 「えっ、そうなの!?」 「美音は美人だし、モテるよ?」 「知ってます……」 「遥人にはハードル高いと思うけどな」 「おいっ」  だから私にしておけば良いのに、と言いたくなる唇を結んで、精一杯の笑顔を作る。 「頑張って」  行動を共にしていても、いつだって遥人には美音しか見えていない。私なんて、いてもいなくても、きっと気づかない。  遥人なんて嫌いだ。嫌いになってしまいたい。  だけど。 「……ありがとう」  ほら。今だって、日だまりみたいな笑顔を見せるから。  悔しいくらいに惹かれてしまうんだ。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!