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俺の前ではケラケラと笑っていたお前。
褒められたって知らん顔してどこかに走って居なくなるお前。
由紀の前ではそんな姿見せていたの?
「『あいつの努力は認められるべきだ』って言いつつも、匡人は描くことが好きで悩んでた。……まぁ、習字は本気で嫌いだったけどね」
俺は習字が好きで絵を描くことが嫌いだ。
何だよ……正反対じゃないか。
「……匡人のかばんから……ヒドい状態の教科書が出てきたって?」
「あぁ……」
拳を握ると、爪が手のひらに食い込んだ。
そんなの気にしないで俺は更に力を込める。
「人一倍悩むくせに相談しないもんね」
「バカなのにな」
「……優人もだよ?……もう無理しなくていいんじゃない?」
じっと見られているのに、涙が溢れてきて由紀の顔もちゃんと見えない。
「ずっと優人は優人!匡人は匡人だったでしょ!」
肩に触れられたのを感じて顔を上げつつ腕で雑に拭う。
「匡人はきっとどこかで見てるよね!」
「……だな」
由紀に手招きして、俺らは並んで窓辺に立った。
青くどこまでも広がる空。
この空はお前のところまで繋がっているか?
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