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その後
「ねぇ、優人」
部屋に居た俺は声を掛けられて振り返る。
「匡人の冗談じゃないの?どっかで隠れて笑ってないの!?『あいつら騙されてやんのー!』って」
涙を堪える由紀。
「……な」
目を伏せると、由紀のすすり泣く声が聞こえた。
「なぁ、由紀……何でいつも俺と匡を見分けられたんだ?」
聞くと、由紀は目をこすって赤い目のままこっちを見る。
「全然違うじゃん。フザけてるフリしてるくせに繊細で面倒くさいのが匡人。真面目で大人しいくせに匡人に合わせてるのが優人」
「は?」
動きを止めると、由紀は少し笑って立ち上がった。
壁にある賞状。
それはどれもお前の方が上の賞。
「匡人、いっつもやるの嫌がってたでしょ?まぁ、本気で面倒くさがってたんだけど……『優人のでいいじゃん。あいつの凄いよ』って……」
言いながら由紀は並んでいる賞状の額縁に触れた。
「仕方なく描き始めるのに描くと集中しちゃって……しかも、いつもいい評価されちゃうのは匡人の方じゃない?」
「実際、匡のは凄いからな」
サラッと描くのに色合いも繊細で細かいお前の絵。
ただ丁寧に時間をかけて真面目に描いただけの俺とは全然違った。
「優人のも凄いよ」
微笑まれて、俺は苦笑いしかできない。
「『俺が居るからあいつのが下の評価されちゃうんだよ』っていっつも気にしてさ。すぐ『もう描きたくない』って言うの。で、いつまでもグダグダ気にするの」
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