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見てしまった。
少女が空を跳んでいるのを。
視力5.0の僕が言うんだから間違いない。
繁華街を歩く僕の他には、空を見上げる者はいない。みんなスマホに夢中だ。
少女は虚空を蹴り、跳び、そして胡坐をかいた。空中で。あくびをしている。
「……!」
「おい、邪魔だ」
「ヒッ! す、すみません!」
驚いていると金髪のヤンキーに怒られた。気が小さい僕はぺこぺこと頭を下げる。顔を上げると誰もいなかった。何もない空間に謝っていた。
空を見上げると、少女はいなくなっていた。
きっと疲れてるんだ。疲れてるから幻覚なんて見ちゃったんだ。人間が空を跳べるはずない。当たり前だ。
僕は駅へ向かった。
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