ネオン

1/7
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
 見てしまった。  少女が空を跳んでいるのを。  視力5.0の僕が言うんだから間違いない。  繁華街を歩く僕の他には、空を見上げる者はいない。みんなスマホに夢中だ。  少女は虚空を蹴り、跳び、そして胡坐をかいた。空中で。あくびをしている。 「……!」 「おい、邪魔だ」 「ヒッ! す、すみません!」  驚いていると金髪のヤンキーに怒られた。気が小さい僕はぺこぺこと頭を下げる。顔を上げると誰もいなかった。何もない空間に謝っていた。  空を見上げると、少女はいなくなっていた。  きっと疲れてるんだ。疲れてるから幻覚なんて見ちゃったんだ。人間が空を跳べるはずない。当たり前だ。  僕は駅へ向かった。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!