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「えっ? 万結が妊娠?」
思わず大声になり、辰巳はスマホを握りなおした。
「そうなの、私も驚いたわ。でも間違いないって」
母の声色は思いのほか明るかった。
辰巳は首をひねった。万結とはもう何年も夫婦関係がない。俺の子じゃないんじゃないか……
あいつにそんな相手がいたのか? 考えを巡らせるうちに、はっとした。国会が始まる前、地元の後援会主催の壮行会で泥酔した。家に着くや菜々美を探したが見つからず、久しぶりに万結の部屋に行った。酔いすぎて記憶はおぼろげだが、朝目覚めて、隣に万結の白い背中があってぎょっとした。まさかあのときか……
「もしもし、聞いてる?」
母の声に我に返る。
「あ、うん……」
「あなたもお父さんなんだから、しっかりなさい」
そういって通話は切れた。
あんな母でも初孫は嬉しいのか。辰巳は釈然としなかった。
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