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 半年が経ち、万結のお腹はスイカのように膨らんでいた。お腹の子が男の子だとわかり、母の節子は上機嫌だった。屋敷の一番陽当りがよい部屋を万結のために改装し、早々にベビーベッドやベッドメリー、専用のクローゼットやおもちゃまで揃え、嬉々として初孫の誕生に備えていた。ベッドの上にぶらさがっている、オルゴールが音を鳴らすおもちゃがベッドメリーだと、辰巳は初めて知った。 「このベビーベッド素敵でしょう。カッシーニよ。万結さんも気に入ってくれて」 「はい。お義母(かあ)さんありがとうございます」  リクライニングチェアに躰をあずけた万結が、大きなお腹をさすりながら微笑む。 「元気な赤ちゃん産みますから、あなたもお仕事がんばってください」  柔らかい声でそういいながら、万結が辰巳の眼をまっすぐに見据える。その目に辰巳はたじろいだ。 「もう、わたしをこの家から追い出すのは無理よ」万結は眼の奥で、そういって(わら)っていた。  節子が、ぱんと手を打つ。 「そうそう辰巳さん、万結さんは出産までのあいだ、ご実家に帰ることになったから」 「すみませんお義母さん、わがまま聞いていただいて」 「いいのよ。大事な初孫のためなら、なんでもいってちょうだい」  万結が、「やさしいおばあちゃんで幸せね」というと、節子は膝を折り、万結のお腹にやさしく手を添えて、「早く会いたいわあ」と、目を細めた。
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