婚活の時間

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婚活の時間

「えッ、なんだってェ?」  思わず生徒たち全員が立ち上がった。冗談にしてはキツすぎる。 「ああァら、坊やたち、聞こえなかったのかしらァ?」  美人教師は腕を組み、上から目線で聞き返した。 「いえ、ちゃんと聞こえましたけど退何なんですか」  ボクたちも寝耳に水だ。なんの予告もなしに退学なんて釈然としない。 「なにか不満でも?」 「ぬう、そんなの不満に決まってるじゃないですか。突然、補習クラス全員退学なんて」 「そうだ。そうだ!」  生徒たちは口々に文句を言い始めた。 「どう考えても横暴でしょう!」  一斉にブーイングの嵐だ。いくら織田マリアでも傲慢すぎる。 「うるさいわね。お黙り!」  織田マリアはまた机をバンと叩いた。 「うッ、ううゥ!」 「良いこと。学園も慈善事業(ボランティア)でみんなを卒業させるワケにはいかないのよ」 「言い分はわかりますが、あまりにも唐突過ぎますよ」 「なによ。そんなに退学するのが嫌なの?」 「そりゃァイヤですよ。嫌だからみんな補習しに、この暑い中放課後、残っているんじゃないですか」 「フフゥン、そうね。でも救済措置がない事もないわよ」 「はァ、救済措置ですか?」  良かった。みんなホッとした顔をした。まだ退学と決まったわけではないようだ。 「ええェ、これから卒業までの半年で婚活して婚約を勝ち取れば卒業できるし大学へもすんなり進学できるわ」 「なんですって?」 「婚活ゥ?」 「そうよ。これから婚活をして無事婚約までたどり着けば受験勉強なんかしなくても大学への進学が決まるの」 「マジか?」 「ええェ、どうするの。みんな、退学する。それとも婚活する?」 「ううゥ、そりゃァ」  そんなこと訊くまでもない。 「婚活するに決まってますよ」  こうしてボクたちのが開始された。
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