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ドリー
ボクらは婚活の手始めに担任の織田マリアから指示を受けた。
まず公式の婚活アプリをダウンロードし、好みの相手を探すことから始まった。
するとAIが好みの異性から任意の相手を選び出し、ユーザーに紹介してくるらしい。
あとは気に入ったその異性とマッチングしてくれるようだ。
さらにデートを重ね、結婚するかどうかを決めるらしい。
非婚率の抑制に、婚活学園が貢献できるかどうかの実験だ。できるだけ手短にドリーへ説明をした。
「ふゥン、じゃァ、友朗たちは実験的に婚活するってわけなの?」
「ああァ、でもボクたちは退学が掛かってるからね。補習組のみんなも必死だよ」
「トモローは?」
「え、もちろんボクだって、このままエスカレーター式に大学まで行きたいからね」
手をこまねいているワケにはいかない。退学になって高校中退なんてシャレにならない。
「でもトモローは女性と付き合うのが苦手でしょう?」
「ウン、そうなんだよ」
「じゃァ、しょうがないから免疫がない友朗とデートのリハーサルをして上げるわ」
ドリーは何かを企んでいるように微笑んだ。イタズラ好きな小悪魔みたいだ。
「え、ドリーがリハーサル?」
「そうよ。嬉しいでしょ。じゃァ、デートしましょ」
まるで本当の恋人のように腕を組んだ。
「あッああァ」
不意に腕を組まれたのでドキドキしてしまった。初体験だ。
「ほらァ、オドオドしないの。堂々としなさい。あまり慣れすぎているのも困るけど、そんなに緊張してたら相手もデートしにくいじゃん」
「ううゥン、まァ、そんなのはわかっているけど」
「ねえェ、これで婚活が上手くいったら、シャトレーゼのまんまる苺ケーキを奢りなさい。約束よォ」
「え、ああァ、そんなことならお安い御用さ。婚活が成功したらスイーツなんか、好きなだけ奢って上げるよ」
婚活に失敗すれば退学になるのだ。スイーツで済むなら安上がりだ。
「やったァ。じゃァ、頑張ってデートのリハーサルしよう」
ニコニコしてボクの腕に甘えてきた。
「はァ」
まったくスイーツひとつで、現金なヤツだ。
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