9人が本棚に入れています
本棚に追加
デート
とにかくボクは人見知りで知らない人と話す事が苦手だ。ヤケに緊張してしまう。
特に女性とは話しが続かない。
しかもボクはアイドルヲタだ。趣味も偏っている。
まさか婚活デートで好きなアイドルの話しをするワケにもいかないだろう。野球やサッカーなどのスポーツの話題も女性には不向きだ。
ドリーは、そんなボクの腕を掴んで振り回し叫んだ。
「だからさァ。トモロー! 無理して話そうとするなよ」
「え、どうして?」
「どうせトモローの話しは絶望的につまらないんだから、さァ!」
「はァ、絶望的ッて悪かったな」
ハッキリとドリーに言われてしまった。だが、その通りなので返す言葉がない。
「トモローは、ニコニコして彼女の話しを聞いていれば良いのよ」
「はァ、そうだね」
彼女の言う通り、ひたすら聞き役に徹するのみだ。そのあともデートのリハーサルは続行された。
「じゃァ取り敢えず映画を観に行こうか?」
ボクが提案したがドリーは眉をひそめた。
「ふぅン、映画ねえェ。悪くはないけど」
なんとなく不服みたいだ。
「ダメかなァ。相手の好みもわかるし」
「そうねェ」少し考えているようだ。
「じゃァ、水族館は?」
「ンうゥ……、有りがちよねえェ」
「動物園は?」
「まァ、無難なんだけど」
「ぬうぅクレーマーか。文句多すぎだろう。じゃァどこなら良いんだよ? 美術館か。それとも遊園地か」
「あ、そうだ。あそこへ行こうか?」
ドリーはボクの手を引っ張って走り出した。
「おいおい、あそこッてェ?」
つられてボクも駆け出した。
「フフゥン、ホームセンターだよ」
「えッ、ホームセンター? 何を買うんだ。ホームセンターで」
「南京錠さァ」
「な、南京錠なんて買ってどうするんだよ」
「ほらァ、江ノ島の『恋人の丘』だよ」
「恋人の丘? まさか恋人同士で金網に南京錠をかけると結ばれるッてヤツか?」
かなりむかし流行った湘南では有名な『都市伝説』だ。
江ノ島の恋人の丘で龍恋の鐘を鳴らすと二人は結ばれると言う話しだ。
最初のコメントを投稿しよう!