デート

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デート

 とにかくボクは人見知りで知らない人と話す事が苦手だ。ヤケに緊張してしまう。  特に女性とは話しが続かない。  しかもボクはアイドルヲタだ。趣味も(かたよ)っている。  まさか婚活デートで好きなアイドルの話しをするワケにもいかないだろう。野球やサッカーなどのスポーツの話題も女性には不向きだ。  ドリーは、そんなボクの腕を掴んで振り回し叫んだ。 「だからさァ。トモロー! 無理して話そうとするなよ」 「え、どうして?」 「どうせトモローの話しはんだから、さァ!」 「はァ、ッて悪かったな」  ハッキリとドリーに言われてしまった。だが、その通りなので返す言葉がない。 「トモローは、ニコニコして彼女の話しを聞いていれば良いのよ」 「はァ、そうだね」  彼女の言う通り、ひたすら聞き役に徹するのみだ。そのあともデートのリハーサルは続行された。 「じゃァ取り敢えず映画を観に行こうか?」  ボクが提案したがドリーは眉をひそめた。 「ふぅン、映画ねえェ。悪くはないけど」  なんとなく不服みたいだ。 「ダメかなァ。相手の好みもわかるし」 「そうねェ」少し考えているようだ。 「じゃァ、水族館は?」 「ンうゥ……、有りがちよねえェ」 「動物園は?」 「まァ、無難なんだけど」 「ぬうぅクレーマーか。文句多すぎだろう。じゃァどこなら良いんだよ? 美術館か。それとも遊園地(アミューズメントパーク)か」 「あ、そうだ。あそこへ行こうか?」  ドリーはボクの手を引っ張って走り出した。 「おいおい、あそこッてェ?」  つられてボクも駆け出した。 「フフゥン、ホームセンターだよ」 「えッ、ホームセンター? 何を買うんだ。ホームセンターで」 「南京錠さァ」 「な、南京錠なんて買ってどうするんだよ」 「ほらァ、江ノ島の『恋人の丘』だよ」 「恋人の丘? まさか恋人同士で金網に南京錠をかけると結ばれるッてヤツか?」  かなりむかし流行った湘南では有名な『都市伝説』だ。  江ノ島の恋人の丘で龍恋(りゅうレン)の鐘を鳴らすと二人は結ばれると言う話しだ。
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