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今日はハロウィン! そして俺はかぼちゃのお化け、ジャック・オー・ランタンだ!
今年のハロウィンは、森に囲まれた静かな寄宿舎にお邪魔することにしたぜ。
脅かしがいのある、純粋そうな男の子たちばかりだから、いまから悲鳴を聞くのが楽しみだ。
やつらの様子をうかがうことにしようと思っていたら、さっそく赤毛のくるくる頭の子に見つかっちまった。
「わあ! 君、ハロウィンの精霊さん? こんにちは! 僕、ルーだよ」
「ちっ、見つかったなら仕方ねーな。だが、俺のことはみんなには秘密にしときな。じゃなきゃ、お菓子じゃなくイタズラをもらうことになるぜ」
「うんうん、僕たちふたりの秘密ね! てか君、驚かないの? ほら、こういうときの定番って『な……!? お前、俺が見えるのか!? 俺が見えるのは純粋な人間だけのはず……』ってやつでしょ!?」
「え? いや、そりゃ見えるだろ。俺自身は霊体でも、普通のかぼちゃの中に入ってんだからよ」
「やりなおして」
「え?」
「やりなおして」
目が据わってて怖い……!
「な、な……? お前、俺が見えるのか……? 純粋な人間にしか……見えない、はず、なのに……」
「うふ♡ 君のこと、だ~~~れにも言わないよ! 素敵な友だちができてうれしいな!」
ふう、なんだか知らねーが面倒なやつに見つかっちまったみたいだ。でもまあ、抱えて移動させてもらえるし、これはこれでラッキーか。
最後にみんなまとめて阿鼻叫喚の地獄を見せてやる!
「あれ? ルー、サロン室に行くの?」
妙に優等生そうなやつが出てきやがった。
確かこいつの名は——。
「やあ、エヴァ! そうだよ。さっきエドマとベルトがミリアンと手分けして、サロン室に仮装の衣装を持ってきてくれたんだ。どれを着るか選ばないと! 早いもの勝ちだよ」
エヴァって呼ばれたやつの隣には、黒髪のメガネっ子がいる。
こいつはアマーリとか言ったな。熱心に神を信じてやがるやつだ。
「ルー、あの、その小脇に抱えているかぼちゃだが、こ、こっちに顔を向けるな! 不気味だ」
「えー? そう? 僕にはかわいく見えるけど」
「う!! 目が合った——あ、頭が痛い気がする、あたたたた」
ははははは! こいつはなかなか勘がいいみたいだな。楽しいぞ。
「アマーリったらまたまた~。僕らもう16歳にもなったってのに、まだ厨二病? 邪気眼が目覚めだした?」
「し、失礼な!!! 神の守りたもう俺にそんな物騒なものがあるわけないだろう!! ——ないよな? いまのでまさか、目覚めたり、しないよな?」
カッカッカッ! 真っ青になっちゃってかわいいね~~!
アマーリ、気に入ったぜ。
と思っていたら、おっと! エヴァが俺の頭を撫でてきやがる。
「まあまあ、僕にもかわいく見えるけどね。みんなで協力してくり抜いたんだもん、大きさの違う三角の目にも愛着があるよ。でもほら、いい子だからルーのお腹のほうを向いてぎゅってしてもらいな。よしよし」
え? 何それ、好きになるじゃん……やめろよな……。
うっかり初恋に落ちそうになってしまったが、どうにかお茶を飲むサロン室まで来られた。
ルーが俺を暖炉のでっぱりの上に置いてくれたので、じっくり部屋中を眺められる。
あいつが双子の兄のほうエドマか、さっきからだんまりだな。
で、あっちが弟のベルト。きれーな顔しやがって。 それからあれがキザっぽい雰囲気のミリアンだな。
6人ともなるとなかなか賑やかだ。
アマーリが何度も俺を振り返るので、特別にピカッと光るウインクをしてやったら、泡を吹いてソファに倒れやがった。
ルーとエヴァが呑気に「あれ? アマーリったら昼寝?」「寝かせてあげようよ、きっとプレパ(※1)に向けての勉強で寝不足なんだ」とくっちゃべっているのが、ちゃんちゃらおかしいぜ。
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