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車が停まり、わたしは降ろされた。 男たちはわたしの服を脱がせると、手足をきつく縛りあげた。 そして、剃刀で全身の毛を剃り始めた。 わたしは叫んだ。 「おまえたちは、太らせた客を調理して豚肉と偽って振舞っていたのか!」 店主の笑い声が聞こえた。 「お客を調理する、ですと?  そんなおぞましいこと!  わたしが調理するのは、豚肉だけ。  極上の芸術品、特別な豚肉だけです」 そこは厨房ではなかった。 店主がドアを開くと、ムッとするような家畜の匂いが部屋に入ってきた。 外には、何頭もの大きな豚がひしめいていた。 店主は言った。 「この豚には、もう3日もエサをあたえていないのです。  腹ペコの豚は、目の前にあるものなら何でも食べるでしょう。  獣たちよ、存分に喰らうがよい!」 男たちは、わたしを泥だらけの豚小屋に放り込んだ。 特別な豚たちの絶食は、解禁された。 〜終わり〜
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