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郊外にひっそりと佇むレストラン。
看板はなく、ドアに小さく「キルケ亭」とプレートが羽目られている。
禁酒法時代のシカゴの酒場のように、会員だけが知っているやり方でノックをすると、ドアの小窓が開き、さらに合言葉を言わなければ入ることができない。
今月の合言葉は『カリプソ』
ここ「キルケ亭」には、守らなければならないルールがある。
ひとつ、
必ずひとりで行かなければならない。
たとえ会員同士であっても、連れ添って入店はできない。
無断で友人を連れてきて、追い返された会員もいると聞く。
ふたつ、
「キルケ亭」では料理を選ぶことはできない。
あらかじめコースが決められていて、味付けや焼き加減の注文もできない。
客は席でひとり静かに待ち、運ばれた料理を食べ、店主以外とはひと言も言葉を交わすことなく帰るのだ。
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