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「豚は雑食ですからねぇ」と、店主は言った。
「と言うと?」
「牛肉やラム肉も、もちろん美味しいですよ。
でも、やつらは何を食べてます?
草や穀物をむしゃむしゃ、もぐもぐ・・・ひたすら反芻して。
同じ餌で飼育されれば、どうしても単調で深みのない肉になってしまう。
ですが、雑食性の動物は何でも食べます。
その肉は、実に複雑な、芸術的とも言える味わいになります」
「なるほど、豚は雑食・・・つまり、特別な餌を与えた豚は、特別な味わいの肉になると?」
「ええ、そして数日でも絶食させられた豚の食欲には驚きます」
わたしは、このディナーのために数日のあいだ食事を控えめにしていた。
店主は『本日のコース』が書かれたカードを手渡した。
「前菜はアスパラガス、コンソメスープ、サラダ、メインにロースト、そしてデザート、我々人間もやはり雑食ですからねぇ」
「ローストは豚肉?」
「ええ、もちろん。
では、ごゆっくりお楽しみください」
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