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駅員室から出た後。
鈴木くんと2人きりになると、安心感からか涙が出そうになった。
「よかった…僕、どうしても抵抗できなくて…」
「陸。もう大丈夫だよ」
鈴木くんの笑顔は温かくて、余計に泣きそうになる。
「鈴木くん、本当にありがとう。でも、どうしてここに? 今日は熱があるんじゃ…」
「ごめん、あれは嘘」
鈴木くんは苦笑した。
「この前、陸を痴漢した男と似たやつを見かけたから、絶対捕まえてやりたくて。ただ、近くに僕がいたら手出ししてこないと思って――離れたところから様子を見て、陸に手を出した瞬間に捕まえてやろうって思った」
怒りを滲ませて言う鈴木くんに、陸は驚く。
「そうだったの…。でも、嘘なんてつかなくても良かったのに」
「本当のこと言ったら、陸がまた怯えた表情するかなって思って――その顔、見てると辛いんだ。陸には笑顔でいてほしい」
鈴木くんは優しい眼差しを向けてくる。
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