【第一章 出会い】

2/5

22人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
ふと、電車がカーブに差し掛かり揺れる。 「おっと……」 車内の人は揃って同じ方向に体が動き、陸も同じように揺れた。後ろの人の体が自分に当たる。 カーブを曲りきり体勢を戻すと、周りも同じように戻る―― 「ん……?」 腰のあたりに違和感を感じる。さっき当たった後ろの人の手が腰に当たっているのだと、陸は察知した。 人が多すぎて振り返ることはできないが、手つきが明らかに意図的に陸に触れていた。 ――何これ……。 手は腰の周りを執拗に撫で回し、そのまま下へと滑っていく。太ももを撫でられた時、陸は声をあげそうになった。 ――痴漢、か? まさか、男の自分に? 信じられない思いだった。途端に気持ち悪くなり怒鳴り込みたい気持ちになるが、恐怖も感じていた。 気のせいか、と思おうとしても、手は何度も陸の臀部を撫で回してくる。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加