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ふと、電車がカーブに差し掛かり揺れる。
「おっと……」
車内の人は揃って同じ方向に体が動き、陸も同じように揺れた。後ろの人の体が自分に当たる。
カーブを曲りきり体勢を戻すと、周りも同じように戻る――
「ん……?」
腰のあたりに違和感を感じる。さっき当たった後ろの人の手が腰に当たっているのだと、陸は察知した。
人が多すぎて振り返ることはできないが、手つきが明らかに意図的に陸に触れていた。
――何これ……。
手は腰の周りを執拗に撫で回し、そのまま下へと滑っていく。太ももを撫でられた時、陸は声をあげそうになった。
――痴漢、か? まさか、男の自分に?
信じられない思いだった。途端に気持ち悪くなり怒鳴り込みたい気持ちになるが、恐怖も感じていた。
気のせいか、と思おうとしても、手は何度も陸の臀部を撫で回してくる。
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