《第二章 進展》

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「“今まで見たことのない鈴木くんの表情に戸惑いながら、陸はこみ上げる衝動を抑えられずに鈴木くんを見上げていた――”」 書きかけの小説の最後の一文を読み上げる鈴木くん。 この状況がその続きなのだと、陸は理解した。 「陸が完結させてよ、この小説。そしたら雑誌にそのまま応募するから」 「何だって…?」 「選ばれたら賞金5万円と雑誌への掲載。ここで目を付けてもらえたら、俺は小説家への道が拓ける」 陸が応援してくれた通りにね――と鈴木くんはにやりと笑った。 「………」 陸は思案した。 鈴木くんの小説を応援したい気持ちは強い。たとえそれがどんなジャンルの小説だとしても、陸が鈴木くんのファンであることには変わりない。 このままうまく小説を完結させれば、鈴木くんの夢に協力できるということか。だとしても、この設定の意味は――? 「成田陸は鈴木くんが好きで、2人は良い感じになってる見せ場だよ」 鈴木くんが状況を叩き込んでくる。そして「陸、いくよ…?」耳元で囁かれ、陸はぎゅっと目を瞑る。 そんなことって……。 見上げた鈴木くんの顔は陸を愛おしそうに見つめていて、ドキリとした。 そのまま2人は見つめ合った――。
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