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第三章 最終章
「陸、怪我はない?」
鈴木くんの声は優しかったが、その中に友人を超えた感情があることを陸は感じ取った。
「大丈夫だよ。それより――」
陸は、仰向けのまま鈴木くんの右手を強く引いた。
「鈴木くん、なんか僕に言いたいことあるんじゃないの?」
挑むような眼差しで鈴木くんを見上げる。
誰かに強気な態度を取ることは慣れなかったが、自分が小説の主人公だと思うと演じることができた。
予想外の台詞に、鈴木くんはなんて答えるか困っているようだった。陸は内心でにやりとする。
「言ってよ。鈴木くんの本当の気持ち――」
陸は反対の手を彼の背中に回した。
「陸。ここは俺じゃなくて陸が……」
「僕からは言わないよ」
陸は顔を背けた。
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