【第一章 出会い】

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「あの…S大学の方ですよね?」 相手が先に言葉を発したが、陸もピンときていた。 「そうです。文学部の成田陸です。もしかして、鈴木くん?」 「そう!」 彼は笑った。S大学は大きい大学なので、文学部といっても人数が多くて全員を把握することは難しい。だけど、同じ授業にいた鈴木くんであることは確かだった。 「本当にありがとう、鈴木くん」 改めて陸がお礼を言うと、 「いつも僕もあの電車に乗ってて。たまたま痴漢現場に遭遇したから、いてもたってもいられなかった」 と鈴木くんは顔をこわばらせた。 「犯人、捕まえられなかったのが悔しいな」 「いや、本当に助かったから。まさか男の自分のこと痴漢する人間がいるなんて――」 思い出すと、ゾワっと鳥肌がたった。 「成田くん……」 そんな自分を、鈴木くんは心配そうに見ていた。 思えばこの時から、鈴木くんに好意を抱き始めていたのかもしれない。
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