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①
え?
え?え?え?
頭が真っ白になりそう。今、僕に起こっていること。一体何?中田先輩の唇が僕の唇にくっついて吸い付いてる。こ、コレ…僕の初めての…キス?
「ごめん、森合。つい。」
つい!?
高校2年、森合歩。初めてのキスの相手は中田裕先輩。男です。
なんで?
「お前がかわいいから。」
かわ…かわいい?僕、男ですけど。
先輩の顔は真っ赤で。僕の顔はおそらく真っ青だ。
「また、明日な。」
先輩は自分の唇を押さえて、下を向いて部室から出て行った。
僕と先輩は2人きりの演劇部。
先輩が台本を書いて、僕と2人っきりで演出を決めて、大道具、小道具を用意する。
照明と音響は大会の時に放送部に手伝ってもらう。
だいたいは、先生はほとんど来ないし2人だけの時間を過ごしている。
だから、今日も2人きりだった。
台詞の読み合わせをしていた。男女の設定で僕が、女子役で。なぜなら僕は、結構地声で高めの音程の声が出せるから。
え?本当に女子に見えたの?かわいいって。…。
唇を触ると、顔が熱くなっていく。台本を手に取ってセリフを確かめた。愛してるとか、好きとか書いてある。
あ、演出。…そ、それだ。
僕は自分に言い聞かせて、カバンを持った。部室から出て鍵を閉めて家に帰ることにした。
でも、これからどんな顔して部活やればいいんだろう。
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