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駅前の大通りを走り抜け、同じような一戸建てが並ぶ住宅街を通り、小高い丘の上の神社に到着するまでの間に、たくさんの幽霊とすれ違った。
サラリーマンもいたし、子どももいる。全体にぼんやりしてかろうじて人だと分かるレベルのもいた。
わたしは、そういうものを自分の世界からなきものにしていた。自分にとって未知のものは怖いから。
でも、彼らはいつだってそこに当たり前にいたし、決して異質なものでも未知のものでもない。見える人と見えない人がいるけれど、わたしたちは、多分ずっと前から当たり前に共存していた。
その事実を私は理解し始めていた。
「自分とは違うものに対してむやみに怯える必要はないのよ。その弱い心が、ヤツらにつけ入る隙を与えるの」
お母さんの言葉が脳裏に浮かぶ。
走っている途中に目が合った半透明の小さな女の子が、神社まで付いてきた。ちょっとびびったけど、わたしはその子にきっぱり言った。
「ごめんね、わたしには何もできないよ」
女の子は少し悲しそうな顔をしたけれど、それ以上なにかしてくることはなかった。
そうやって、少しずつわたしは彼らとの向き合い方を学んでいった。
一番ムダだと思っていた空手では、意外な収穫もあった。
やろうと思えば、意外と幽霊にも物理攻撃は効く。
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