祓ってあげたい!

10/15
前へ
/15ページ
次へ
 駅前の大通りを走り抜け、同じような一戸建てが並ぶ住宅街を通り、小高い丘の上の神社に到着するまでの間に、たくさんの幽霊とすれ違った。  サラリーマンもいたし、子どももいる。全体にぼんやりしてかろうじて人だと分かるレベルのもいた。   わたしは、そういうものを自分の世界からなきものにしていた。自分にとって未知のものは怖いから。  でも、彼らはいつだってそこに当たり前にいたし、決して異質なものでも未知のものでもない。見える人と見えない人がいるけれど、わたしたちは、多分ずっと前から当たり前に共存していた。  その事実を私は理解し始めていた。 「自分とは違うものに対してむやみに怯える必要はないのよ。その弱い心が、ヤツらにつけ入る隙を与えるの」     お母さんの言葉が脳裏に浮かぶ。  走っている途中に目が合った半透明の小さな女の子が、神社まで付いてきた。ちょっとびびったけど、わたしはその子にきっぱり言った。 「ごめんね、わたしには何もできないよ」  女の子は少し悲しそうな顔をしたけれど、それ以上なにかしてくることはなかった。    そうやって、少しずつわたしは彼らとの向き合い方を学んでいった。  一番ムダだと思っていた空手では、意外な収穫もあった。  やろうと思えば、意外と幽霊にも物理攻撃は効く。      
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加