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その夜、会社から帰ったお母さんと話し合いになった。
「リコ、あれは危ないから絶対に近寄っちゃダメ。あんたなら分かるでしょ?」
「そんなの分かってるよ。今日のは不可抗力だったの!それよりお母さん……アレに憑かれ続けていたらどうなるの?祓う方法ってないの?」
「そりゃ、ないわけじゃないけど……あんたには無理。アレはお母さんにだって難しい相手だった。離れていても危険な気配を察知したくらいだもの。どうしてその男の子があんなのに憑りつかれているのかは分からないけど、どうしようもない。可哀そうだけれど」
もう分かると思うが、うちのお母さんはとんでもない霊能力の持ち主だ。若い時は、そっち方面のスカウトも多かったらしい。修行すれば、スゴイ霊能力者になれるんだとか。とは言え、そんなものに興味のないお母さんは、今はただの会社員で主婦だ。
「でも……カズキくん、右手をアレにやられてた。首も痛いって言ってて、あのままじゃ絶対にいつか死んじゃうよ。そんなの……」
絶対にイヤだ。
「リコ…。あらあら、そういうこと?カズキくんて、そういう子なのね?」
「なっなに、そういう子って!?」
「あらぁ、そっかぁ。それなら話は変わるわねぇ。でもねえ、私も会社休めないしなぁ」
お母さんは何かブツブツ言って、パンと両の手のひらを合わせる。
「ひとつ、手があるわ。でも、それにはあんたの相当の覚悟と修行が必要よ。どうする?やる?」
お母さんの顔がいつになく真剣だった。多分、本当に危険なことなんだろう。
怖い。でも――
「やる。カズキくんのこと、絶対に助ける」
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