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心の霧は晴れないまま、部活の時間が始まった。私は吹奏楽部でサックスを吹いていて、今日はパート練習からスタートだった。いつもの教室に向かうと先輩達が何やら話していた。
「真剣そうになんの話してるんだろうね」
同じくサックスの理恵が私に言う。
「だね」
私たちが失礼します。と言い、教室に入ると三年生の紗良先輩が私たちに気づき駆け寄ってきた。
「あ、二年生の二人さ、新しい曲なんのパートやりたい?」
「文化祭でやる曲ですか?」
私は先輩に尋ねた。
「そう!この曲なんだけどね、ほら、ちょっと前にめっちゃ流行ったドラマあったじゃん?あの主題歌で…」
紗良先輩はそう言いながら、理恵の方を見始めた。質問したのは私なのに、話が進むたび先輩の視線は理恵にばかりいくようになる。紗良先輩にとって大切なのは理恵の方なのだろうなとまた心が痛くなる。
先輩の話が終わり、私たちが個人練習を始めようとすると教室の扉が開いた。現れたのはホルンの一年生、那美ちゃんだった。
「あ、理恵ちゃん、日菜ちゃん!先生があとでニ年生に話があるって!」
理恵ちゃん、日菜ちゃん。
なんでこの順番なんだろう。呼んだ本人は特に意識などしてないのだろう。でも、私はそんな些細なことが気になってしょうがない。大丈夫。いつものこと。私が誰かの一番じゃないなんて。いつものことでしょ。
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