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「ただいまー」
家に帰ると、お母さんとお父さんとお姉ちゃんが揃っていた。
「おかえり!学校どうだった?」
「お母さん、あのね、理恵が誕プレ…」
「あ!そうだ!昨日理恵ちゃんのお母さんに会ってね、華菜お姉ちゃん良い英単語帳知らないかって言ってたわよ」
「えー、私?日菜じゃなくて?」
「そうよ、華菜、この前も英語のテスト一位だったじゃない」
「まぁね、英語は得意だから」
「本当、誇らしいわ。あ、そうだ。日菜、何か話途中だったわよね、なんだったかしら?」
「…ううん、なんでもない」
わかってる、わかってるよ。
家族だって平凡な私より優秀なお姉ちゃんの方が好きなんでしょ?
私は決して愛されていないわけじゃないけれど、注がれる愛の量の違いに時々辛くなる。どこにいても、誰といても、私はいらないんじゃないかってふと頭によぎってしまう。
いつものこと、いつも通りなのに、今日はそれが今までで一番重なった。小さな小さな積み重ねなのに辛くてしょうがなくなった。
私は一人、自分の部屋に行き、自分でも訳がわからないまま泣いた。
よくあることなのに、昔から何も変わってないのに、なんで今日に限って出来事が重なって、こんなにも自分の存在が必要なく感じてしまうのだろう。
言葉にして誰かに伝えたいけど、言葉にすると凄く軽いものになってしまって、この苦しさが誰にも伝わらないような気がして誰にも言えない。そもそも言える人も、言いたい人も、聞いてくれる人だっていないし。
私は私自身も理解しきれていない感情に押しつぶされながら暗い部屋で一人泣いていた。不幸じゃないのに、嫌われてないのに、自分がちっぽけで何も持っていなくて、ふっと消えても誰にも気づいてもらえないような気がしてしまうのはどうしてなのだろうか。
いくら考えても解決しそうにないことをぐるぐると頭の中で考え続ける。
袖が涙でビショビショになっていることに気づいた頃、スマホが鳴った。隣の席の佐藤くんだった。
彼は接点があったわけでもないのに、隣の席になってからしょっちゅう連絡してくる。しかも、それは全部宿題についてだ。
最初は仲の良い人を増やそうと丁寧に答えていたが、だんだんと利用されていることに気づき最近はあまり真剣に返していない。案の定、今日の連絡も『数学の課題どこだっけ?』だ。でも、どうしようもなく気分の落ち込んでいた私は、誰かに必要とされたことが少しだけ嬉しくて久しぶりに丁寧に教えてあげた。するとすぐに既読がつき、『ありがとう!』と一言返ってきた。私はまた、利用されてしまった。
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