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先程まで人だかりの中心にいて、女性達に囲まれてほとんど姿が見えなかった榊原が…
気付けば、女性達の間をすり抜け
ほんの…数メートル先に見える。
ーー… …え?さっきより、近い… …
整った甘いマスクに、穏やかな微笑みをたたえ
まるで計算されたかのような完璧な笑顔。
そしてその優しく細められた瞳の奥には
やはり、あの…
鋭い輝きが見て取れる。
その輝きに引き寄せられるような
金縛りにでもあったかのような
そんな不思議な感覚で…
姫乃は気付けば正面に立つ、榊原を見上げた。
「…君に、お願いしたい」
「・・・・へ?」
「今夜の商談に、付き添っていただけないでしょうか?…花咲 姫乃さん」
しんっと静まり返るオフィス内に、榊原のそんな声が響いた。
『来たね♪チャンス!』
瞳をキラキラと輝かせるユキに、今にも泣き出しそうな表情を向ける。
正直…嫌だ。
というよりも…無理だ。
全くもって自信が持てない。
何がって・・・
ーーこんな、王子様みたいな人と…まともに会話なんてできないよ~!!
と、嘆いたところで…断ると言う選択肢が用意されていないことも十分、理解はしているのだ。
ーーせめて粗相のないようしなければ…って、何で私なのよぉ~!?
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