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よわむし姫に恋の魔法を
先ほどのユキの言葉が、ずっと頭の中をグルグルと巡っている。
そんなつもりではなかった。
王史にはユーリという婚約者がいるため、まじめに受け取ってはいけない。
と思ったのは事実で、大前提。
では、その大前提が…なかったとしたら?
ユーリの存在、水代グループとRose Berry.Co.の繋がり…そんな姫乃の手には負えないほどの大きな問題もなく、王史を、ただ1人の男性として見られるのであれば…?
姫乃を正面から、好きだと言った。
姫乃といるのが一番…落ち着く。と… …
そう言った王史の、イタズラな笑顔を思い出す。
その笑顔はいつも意地悪で
その視線はいつも威圧感があって
見つめられるだけで心臓が縮み上がり
嫌な汗と共に、無意識に体が小さく震えてしまう。
昔から、そうだった。
昔から変わらず…そうだった… …
はずなのに… …
「ひーめーのーさん!」
「っひゃ!」
「ひゃ!じゃないよ~?…ぼうっとしてる」
その声に顔を上げると、呆れたように笑うひなたの姿。
シンプルな白シャツをラフに羽織り、ストレートのショートヘアにキラリとクロスのピアスが覗く。
元々ユニセックスなファッションを好む彼女ではあるが、最近は割と男性的な印象を受ける。
とはいえ、驚くほど違和感なく着こなしているのは、ひなたのその抜群のスタイルと美しい容姿のためだろう。
耳元に揺れるピアスがひなたに似合っていて、綺麗で…じっと見つめてしまう。
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