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「ん~…そうですねぇ…や、優しい…人かな?」
当たり障りのない、何の捻りもないその答えに、我ながらつまらない…と内心ガッカリする。
そんな姫乃を相変わらずひなたがくすくすと笑いながら見つめた。
「あ!ぃ、一緒にいて…安心、する人…とか?」
「へぇ…いるの?そういう人が… …」
ふっと一瞬、大人っぽい表情を見せるひなたに
ドキッとする。
その瞳に促されるように
本当に、無意識に…
「… …います… …」
ぽつりと口をついた。
「…どんな人?優しくて安心できるんだ?」
隣に座ったひなたが、その長い足を組んだ格好で上目遣いに姫乃を伺う。
そのひなたの綺麗な瞳に小さく微笑み、姫乃はふるふると頭を横に振った。
「ぜんっぜん、優しくないんです。昔から、意地悪ばっかりで…私は彼が怖くて…」
ふふっと小さく笑う姫乃を、ひなたは相変わらずじっと見つめ、視線で続きを促す。
「口を開けば人のこと『グズ姫』ってバカにするし、距離感むちゃくちゃだし…。『好き』だなんて、簡単に言ってみせるけど…私は…簡単には応えられない… …
っご、ごめんなさい!ひなたさんにつまらない話をしてしまいました!気になさらないで下さい!!」
慌ててひなたに笑顔を向けて、胸の前で手を振ってみせる。が、姫乃のそんな素振りを気にすることなく、ひなたが続けた。
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