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「付き合わないの?姫乃さんはその人のこと、好きじゃないってこと?」
じっと真剣な視線を向けてくるひなたにドキッとしながらも、次の言葉を探す。
「… …好き…か、どうかは… …分かりません。
怖いし意地悪だし、苦手だけど…でも、いつも私を助けてくれるんです。それに彼の側にいると、弱虫な私も何だか少しだけ…強くなれるんです。それがとっても嬉しくて…
でも…私の気持ちなんて、関係ないんです。
彼には婚約者もいて、背負ってる大きなものがあって…私とは別の世界の人で…好きになっても、辛いだけなので…」
ひなたに気を使わせてしまっているんじゃないだろうか。ひなたにこんな話をしてしまって、申し訳ないという気持ちになるが…意外にも、ひなたが言葉をかぶせてくる。
「その人は、姫乃さんのことが好きって言ってるんでしょ?…じゃあ姫乃さんはその人のこと、信用してないってことだね」
「ぇ… …?」
「婚約者もいて、大きなものを背負ってて、そんな人が…言う?『キミが好きだ』って。それは相当な遊び人か…相当、姫乃さんのことが好きなのか… 」
どっちだと思う?と、くすっと笑って見せるひなたに釘付けとなる。
王史が"遊び人"などではないのは明らかで…
では、そうなると…王史は… …
「姫乃さんがその人のこと信じられないなら…
やめてしまいなよ。その人のこと考えるの。」
ふいに、ひなたの声が囁くように穏やかとなる。
隣に座るひなたに視線を向けると、思いの外、ひなたの綺麗な瞳が間近にあり…
「…代わりに僕のこと…考えてくれないかな?」
そう言って笑うひなたが、とても綺麗だった。
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