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「なに情けねぇツラしてんだよ」
「・・・・」
開口一番。これだ…
ーー主任…まったくもって、激励ではなかったです…
その長い足を組み、大きな革製の社長席に鎮座した王史はいつもの何割り増しにも…王様のようだ。
なぜだか御椅子に鎮座する王史の正面に立たされ、頬杖をついた格好の王史にじっと見上げられてしまう。
その態度にも萎縮してしまうが、それより何より…
「…だ、だって、やっぱり…自信は、ないです…」
「は?何で?」
「ぁの、ひなたさんは、ひなたさんの作品は、完璧で…このデザインなら起用されてもおかしくない!ってくらい、素敵で… …
でも、私が下手なことをしてしまったら…上手くひなたさんのデザインをアピールできなかったら…
私のせいでって考えると… …」
しんっとわずかな沈黙が流れる。
こんな情けない姿を見せてしまい、また、王史に
『グズ姫』と言われてしまうだろうか…
などと思っていたのだが…王史の返答は、意外なものだった。
「肩の力抜け。…バカみたいに突っ走ってても、周りが見えなくなってたら脱線したことにも気づけない。ひなたはお前にPRを任せたんだろ?
お前なら自分の魅力を理解して、自分の作品の魅力を表現してくれるって思ったんじゃねぇの?
お前が、そのデザインがいいって思うなら、お前の正直な気持ちを言葉にするだけでいんじゃね?
デザインが商品イメージと合うか合わないかなんて、結局見るヤツの判断。お前が表現できるのは、そのデザインが好きだって気持ちだけだろ。その気持ちを伝えられたら十分だよ。
お前の取り柄はバカ正直なところだからな。…姫乃なら、できる」
「…『好き』って、気持ち… …」
ひなたを、ひなたの作品を好きな気持ちは本物で、それはどんな場面であっても揺るがない。
その気持ちを、正直に… …
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