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きっと、王史なりに…姫乃のことを考えてくれているのだ。
基本、自分本位で、勝手で…姫乃の気持ちなんて全く無視だったはずなのに… …
「・・・嫌な、わけでは… …なくて… …」
王史にひかれた手が、熱い。
その綺麗な瞳に見つめられると、心臓がドキドキと苦しくて…
もっと、触れて欲しいと…思ってしまうのだ。
「へぇ…じゃ、座れ」
いつもの横暴な命令。…とは違って、姫乃の意志を尊重してくれた。
たったそれだけのことが、嬉しいと感じてしまう自分は…
そしてそんな王史に、胸が苦しくなるほどにドキドキしてしまっている自分は…
ーー… …変、だ… …
「そのひなたってヤツ…仲良いの?」
「ぇ…と…まぁ、一応、信頼はして下さっているとは、思います…」
「…ふーん。信頼ね…」
不思議だ。不可解で、奇妙で奇天烈。
まさか、よもや…こんな日が来ようとは…
背中に感じる王史の体温に、ウエストに回されたその長い腕に、姫乃の指に絡められた陶器の様に美しいその指に…耳元で囁かれる、甘くて落ち着いたその声に… …
くらくらしてしまう。
「…迫られても、応えんなよ」
「だ、だから、女の子ですって…しかも、6つも年下の…」
「は?関係ねぇだろ。俺以外の奴に触れさせんな」
「…そ、んな… …」
姫乃を抱きしめる腕に力を込め、姫乃の肩に顎を預けたまま甘えた様に言う。
そんな王史を、可愛いと感じてしまうのも…
変だ。
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