よわむし姫に恋の魔法を

8/13
前へ
/371ページ
次へ
きっと、王史なりに…姫乃のことを考えてくれているのだ。 基本、自分本位で、勝手で…姫乃の気持ちなんて全く無視だったはずなのに… … 「・・・嫌な、わけでは… …なくて… …」 王史にひかれた手が、熱い。 その綺麗な瞳に見つめられると、心臓がドキドキと苦しくて… もっと、触れて欲しいと…思ってしまうのだ。 「へぇ…じゃ、座れ」 いつもの横暴な命令。…とは違って、姫乃の意志を尊重してくれた。 たったそれだけのことが、嬉しいと感じてしまう自分は… そしてそんな王史に、胸が苦しくなるほどにドキドキしてしまっている自分は… ーー… …変、だ… … 「そのひなたってヤツ…仲良いの?」 「ぇ…と…まぁ、一応、信頼はして下さっているとは、思います…」 「…ふーん。信頼ね…」 不思議だ。不可解で、奇妙で奇天烈。 まさか、よもや…こんな日が来ようとは… 背中に感じる王史の体温に、ウエストに回されたその長い腕に、姫乃の指に絡められた陶器の様に美しいその指に…耳元で囁かれる、甘くて落ち着いたその声に… … くらくらしてしまう。 「…迫られても、応えんなよ」 「だ、だから、女の子ですって…しかも、6つも年下の…」 「は?関係ねぇだろ。俺以外の奴に触れさせんな」 「…そ、んな… …」 姫乃を抱きしめる腕に力を込め、姫乃の肩に顎を預けたまま甘えた様に言う。 そんな王史を、可愛いと感じてしまうのも… 変だ。
/371ページ

最初のコメントを投稿しよう!

706人が本棚に入れています
本棚に追加