ユーリの王子様

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いつかの遊園地デートでも、こんな光景を見た気がする…。 「ユキさん!もう一回!もう一回あれしよぅ!」 「OK♪じゃ、次は勝負よ?」 人生初の金魚すくいにはしゃぐリオンと、それに付き合うユキの図。 そして、側で休む・・・ 姫乃と王史とユーリ…の図。 「ユーリちゃん、大丈夫?」 姫乃がベンチに腰掛けるユーリを、心配そうに覗き込む。 「ん…へーきへーき。ごめんね?」 どうやらユーリは人混みに酔い、気分が悪くなってしまったらしい。 力なく微笑んで見せるが、顔色は…良くない。 「おーしも、I'm sorry…」 「・・・人混み苦手なくせに、無理すんな」 「ぇ…?」 「前に、何かのパーティーでもぶっ倒れてたろ」 「ふふ…おーし、誘っても参加してくれなかったくせに、何でそんなことだけは知ってるかなぁ」 「…お前に何かあると、十和子さんとスーザンがうるさい」 「I see. スーザンてば、すぐに十和子さんにおしゃべりしちゃうもんね?」 そんな2人の会話に チクンと胸にかすかな痛みが走る。 姫乃の知らない、2人の過去。 もちろん、王史の過去など知らないことの方が多いのだが…2人の過去など、気にしても仕方がないし気にする立場でもないのだが… それでも気になってしまう自分の心に 気づかないふりをした。
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