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リオンが社長からの呼び出しに応えなんて、あり得ない。だってこれまでも言っていた。
『王史は自分の全て』だと。
リオンには王史に返しきれないほどの恩があって、王史の望むことはどんな些細なことでも応えてきた…って。
振動を繰り返すリオンのスマホの液晶に、長い指が触れると、スマホはぴたりと振動を止めた。
そして同じ要領でユキのスマホをタップし、はいっとユキに差し出す。
内心動揺しながらも、平常心を装いリオンからスマホを受け取った。
「… …いいの?呼び出し」
「…さぁ?怒りはしないと思うけど」
「そう言う問題じゃないんじゃない?やっぱり…」
かけ直した方がいいんじゃないの?と、続けようとしたところで…リオンがすっとユキの手を取る。
大きな手の感触にドキッとしながらリオンを見上げると、いつもより大人びた優しい笑顔で、言った。
「もう少し、ユキさんを独り占めしたい…」
「… …独り…占めって… …」
姫ちゃんと合流しちゃうと、俺のこと見てくれないでしょ?と笑うリオンに… …
きっと、遊ばれているのだと思う。
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