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その所作も微笑みも、どこか人を惹きつける。
そんなオーラの持ち主だ。
例に漏れず、姫乃もその男の美しさに視線を奪われていた。
視線を巡らせた男とふと、視線がぶつかる。
そして…
「っ!」
気のせい、だろうか…
ーー今…私に、微笑んだ… …?
「新社長の就任について、うわさ程度には耳にされているかと思います。全社員を集めた就任の挨拶を…などと言う話もあるようですが…くだらない」
ふっと笑ってみせるその不敵な笑顔でさえ、美しいと感じる。
オフィス内が彼の声に、表情に
惹きつけられているのを空気で感じた。
「…申し遅れました。本日よりこの"株式会社Rose Berry.Co."の新社長に就任致しました…榊原です。皆さんの貴重なお時間を割いてまでするような立派な挨拶は準備しておりませんが…どうぞ宜しくお願い致します」
その美しい表情一つをとってみても
まさに姫乃の思い描く『王子様』その物で
放つ言葉も一音一音が、胸に響いた。
『ちょっとちょっとぉ~!新社長イケメン!』
『マジで社長なの!?若くない!?』
『ラッキ~♪眼福だよぉ』
榊原と名乗る新社長に色めき立つのは当然、姫乃だけではないようで、8割を女性が占めるオフィス内は一気にピンク色のオーラに染まる。
「皆さんの貴重な労働時間を僕の話で無駄にはしたくはありませんので…質問にだけお答えします。何か質問のある方はいますか?」
しんっとオフィスが静まり返る中、男性社員が挙手をし、発言した。
「あの、社長は榊原と名乗られましたが…榊原会長と、ご関係が…?」
「…親子です。… …と聞くと、所詮親の七光り…と思いますよね?でも、その通りです。僕のこの役職も地位も、全て親の物。僕個人の実力で成り上がった物ではありません」
はっきりとそう話す榊原社長はどこか余裕の表情で
何とも掴めない…空気のような人物だと感じる。
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