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「ただこれは…僕が自ら選んだ物でもない。
とは言え、引き受けたのは僕です。任された責務は必ず成果を持って果たします。…突然現れた分際で素直に着いて来てもらえる…なんて甘いことは考えていません。
これから皆さんの信頼を得られるよう、皆さんの意見を真摯に受け止め、消費者の期待に応えられるような真に価値ある商品の開発に、誠心誠意勤めたいと思っています…他に、質問はありますか?」
「は~い♪社長さんには恋人はいますか~?」
『ちょ!あんた、よくそんなこと聞けるわね!?』
『え~だって、もう社長さんとお話しすることなんてないかもしれないじゃないですかぁ?』
『そ、そぅだけど…』
「良い質問ですね、大野彩華さん」
「え!?何で名前… …」
「あぁ、僕はちょっとだけ人より記憶力が良いもので…"Rose Berry.Co."の社員3万人の顔と名前くらいは、全て記憶しています。
ちなみに質問の答えですが…僕は、特別なパートナーを作ることはしません。言うなれば、僕にとっての恋人は…この会社でしょうか」
榊原の微笑みに引っ張られるように、オフィス内にくすくすと笑いが起きる。
その声もだが…話し方と言うのか、絶妙な間に余韻を残す語り口調に、惹かれるのだろう。
「僕は一途な男なので、常にこのRose Berry.Co.に尽くしたい。皆さんの未来、消費者の未来を切り開いていくため、どんなことでも貢献したい。そのためなら僕は…全てを捧げられる。そこに特別な感情は不要だと思っています。それなので、特別なパートナーを作る気は毛頭ありません。」
彼から、目が離せなかった。
なぜこれほど惹きつけられるのか…
この胸のざわつきは、何なのか…
ただ一つ、はっきりと感じていることがある。
それは…
彼の放つあの瞳の輝き。
あの王子様さながらに美しく優しい微笑みの中に見せる、穏やかな眼差し。
そして、その奥に光る
誰も寄せ付けないような
鋭い、輝き。
自分はどこかで、この瞳を見ている。
そう…感じるのだ。
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