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「隣人のジョニーを消してくれ。」
俺は路地裏にある暗殺業者「デスハッピーズ」へ殺しの依頼にきた。
「隣人のジョニーとは?詳しくお話しお聞かせ願えますか」
「最近隣に引っ越してきたやつだ」
「その隣人がいったい何をしたので?」
「俺の幼馴染、リサがな、そいつに惚れてしまったんだよ」
「なるほど、よくある三角関係というやつですな」
「リサがやつを見た時のあのうっとりした顔と言ったら…いや、思い出したくもない」
額に手を当ててうつむく俺におかまいなく、男はどんどん話を進めてきた。
「ちなみに確実にターゲットだけを狙うとなると難易度が上がりまして、金額も跳ね上がりますがどうしますか?」
「いや、予算内でやってほしい。ほかのやつらがどうなろうとかまやしない。とにかくジョニーが死んでくれさえすればいい」
「かしこまりました。では巻き込みOKにチェックを入れてください。殺しの手段ですが、刺殺、放火…」
「なんでもいい。任せる」
俺は依頼書すべての記入を終えて、サインをした。
「ケイン・ブラウン様ですね、こちらの内容にてご依頼承りました。決行は明日からになります」
「ああ、よろしく頼むよ」
家に帰りソファーに腰かけた俺はこらえてた笑いを我慢せずにはいられなかった。
「くくく、もうすぐジョニーは消えるのか。はははは」
用意していたワインを開けてグラスに注ぎこむ。
――――そう、ジョニーは先月俺の隣のアパートに引っ越してきた。
人柄も良く爽やかイケメンのやつは近所でもすでに人気者だ。
そんな奴に、俺のリサがついに惚れてしまったのだ。俺は見たんだ、リサがわざわざジョニーのいる教室に行って楽しく談笑しているところを。
リサは小さい頃からずっと俺と一緒だった。時間をかけて築いた絆をどこの馬の骨ともわからんやつに壊されてたまるか。
…まあいい。そんなやつの余命も残りわずかだ。
明日の成功を祈ってワインを飲もうとしたその時、「ピンポーン」とインターホンが鳴った。
「誰だ?リサか?」
ゆっくりとドアを開けると、そこには今話題のジョニーが立っていた。肩にはジョニーのペットであるインコが気まずい雰囲気を誤魔化すようにさえずりを響かせている。
ジョニーは後ろ手に何かを隠している様子だった。俺はもちろん警戒した。
「やあ!ケイン。突然悪いね」
「ジョニー…どうしたんだ?」
まさか俺の企てがバレたのか。俺は溢れ出そうになる冷や汗を隠すために必死に平静を装った。
「実はマカロニサラダを作りすぎてしまってさ…よければ少し貰ってくれないかい?」
「マ、マカロニサラダ?」
「あ、嫌いだったかな?」
俺はとっさに、やつが死んだあと…すなわち未来のことを考えた。
ジョニーとある程度仲良くしておけば、やつが死んだあと俺が疑われる確率は低くなるだろう。仲良くしておくにこしたことはない。
「いや…貰うよ、ありがとう」
「良かった!それじゃ!」
ジョニーは後ろ手に持っていたタッパーを渡すと満面の笑みで去って行った。
俺はやつが自分の家に入っていくのをしっかり見届けてから、勢いよくドアを閉めた。
「やつは何を考えているんだ?まさかリサに近づくために俺と仲良くなろうと…?は、つくづく気に入らないやつだ」
俺はやつのマカロニサラダをゴミに捨てようとした。しかしこれもあとで疑われる原因になるかもしれないと思い、すべてを胃に流した。
マカロニサラダの多さはジョニーの方も俺を殺したいのではないかと思うほどの量だった。
俺ははちきれそうな腹をさすりながらベッドに入った。
「さて、明日が楽しみだ」
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