7.妊娠がわかってから

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7.妊娠がわかってから

 どうしよう。  どうしようどうしようどうしよう。  リーゼは、城から屋敷に逃げ帰った日から部屋に引きこもりながら、ベッドの中で丸まっていた。  リーゼの体になってからは、恋をしたことがなかった。  だから、久々に舞い上がっていたのだ。  脳内から分泌される麻薬のようなものが、リーゼを操っていたのだ。  ちょっと考えれば、自分がベタベタイチャイチャ触っていた男性はエドヴィン王子の声や体格と似ているとすぐに気づけたはずだったのに、その麻薬のせいで可能性を思考する力がゼロになっていたのだ。  顔こそ分からなかったが、匂いや手が触れた感触、抱きしめられた時の熱など、その全てがリーゼを幸福感へと導いてくれた。  後々考えればバカ丸出しな出来事だと思う。  それでもリーゼは顔も知らない男に体を開いてしまうほど、夢中になっていたのだ。  女としての本能がそうさせるのか。  リーゼも、ありとあらゆる蜜愛文庫から、薄い本を作るために様々な文章表現を身につけてきたので、脳内にいくつも言葉が降ってくる。  運命が二人を結びつけた?  もうどうしようもなく、欲しくなった?  その全てが自分に当てはまったことを、リーゼは頭を抱えて悔やんだ。  よりにもよって、神聖なる推しカプの仲を引き裂いたのだ。   「まずい。まずすぎる……」  リーゼの脳内では、推し活モードリーゼが訴えかける。  跪いて推し神様に許しを請え。  そうせねば、推し神様に呪われる、と。 「大変…………!」  そうして、リーゼはベッドから飛び起き、いつものように2サイズはでかい、汚れてもいい服に身を包むと、一心不乱にあるものを描き始めた。  そしてそれは、夕食を持ってきたニーナを心底ドン引きさせた。 「……一体何を描いてるんですか?」 「推し神様」 「……は?」 「推し神様に許しを得なければ、二度と尊い推しカプを拝めないと、推し神様からの神託が」 「ちょっと何言ってるか分かりません」  ニーナのドン引きをよそに、リーゼは、中身さえ口に出さなければ立派なアートを作り上げていたのだった。
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