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「婚約者……試験?」
「はい」
「どなたの婚約者?」
「だから、王子ですって。お・う・じ!」
「それは……弟君のルイ王子ですか?」
「どうしてそうなるんですか!」
確かに、エドヴィン王子には弟がいた。
彼もエドヴィン王子に負けず劣らずイケメンと評判だ。
例えて言うなら、エドヴィン王子が美しい毛並みの黒豹ならば、ルイ王子は白馬といったところか。
「エドヴィン王子のですよ、エドヴィン王子!今リーゼ様が眺めていたその!お兄様の方です!」
「何を馬鹿なことを言っているの?ニーナ。寝ぼけてるのでは?もしくは人違いよ」
「どうしてそうおっしゃるんです?」
「エドヴィン様には、アレクサンドラ様がいらっしゃるのに、なぜわざわざ婚約者試験などする必要があるの?」
リーゼにとって、エドヴィンの横にはアレクサンドラがいる光景はとても自然に脳内に浮かび上がる。
2人とも、にこやかに手を振っているのだ。
さらにリーゼの妄想は止まることを知らず
「どんなウエディングドレスならアレクサンドラ様の良さが引き立つかしら」
とまでぶっとんでいた。
「だから、ウエディングドレスを着る令嬢を、試験するんですって」
「それがおかしいのよ。そもそも、何故そんな招待状が私なんかのところにくるの」
「私なんかって……仮にもリーゼ様は貴族のお一人です。お誘いが来ても何ら不思議は……」
「もし、仮によ」
「はい」
「アレクサンドラ様を引き立てるためだけに試験をするとしても、私なんかよりも素晴らしい家柄で、よりふさわしい令嬢はたくさんいらっしゃるじゃない」
「はぁ……」
「だから、その招待状はきっとミスで送られたのね」
「えっ!?」
その招待状がミスなどではないことを、ニーナは知っていた。
何故なら、この招待状を届けたのは、王子に直で仕える侍従だったのだから。
「お戻しして差し上げて。きっと本当に招待された方の元に届かなくて、招待状が泣いてしまうわ」
「そんなことはないかと!ほら、よく見てください!」
ニーナは、必死に招待状に書かれたリーゼの本名を指さした。
「ここに、ちゃんと!お名前ありますよね」
「あらほんと」
「なので、リーゼ様はちゃんと招待をされたということなんです!」
ニーナは、できればここで白状したかった。
この招待状にリーゼの名前を書いたのがエドヴィン王子本人であることを。
だけど、それを今この場でリーゼに言うことはできなかった。
それが、王子とニーナの間で交わされた、契約だったから。
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